ニュースの概要
フランスの有力紙ルモンドは、中国の飲食店が大手デリバリーアプリによる集客や注文への依存を見直し始めたと伝えた。背景にあるのは、手数料や販促費の負担、そして低価格を競い合う消耗戦である。報道では、過去12か月間に18店舗のうち2店舗が看板を変え、8店舗が閉店した例も紹介され、飲食業界の厳しい環境が浮き彫りになった。アプリ経由の注文は新しい客を呼び込みやすい。しかし売上が立っても手元に利益が残りにくい、という構造的な悩みが現場で強まっている。アプリから距離を置き、常連客や自社の販路に軸足を移す動きが広がりつつある。
引用元: 中国でデリバリーアプリ依存を見直す飲食店が増加、収益構造の転換が課題に(Le Monde)
分析・見解
売上は立つのに利益が残らない仕組み
デリバリーアプリの強みは、店の知名度がなくても注文が入ることだ。新規出店の店にとっては、広告費をかけずに客と出会える貴重な入り口になる。
ただし、その入り口には通行料がかかる。注文ごとの手数料に加え、アプリ内で上位に表示されるための販促費、割引の原資も店が負担することが多い。たとえば1,000円の料理が手数料と値引きで実質700円前後になれば、食材費と人件費を引くと手元にほとんど残らない。売上の数字は伸びても、利益は細っていく。
18店舗中10店舗が変化した数字の重み
報道が示した「18店舗のうち2店舗がブランド変更、8店舗が閉店」という数字は、小さな標本ではある。それでも1年で半数以上の店が看板を下ろすか変えている事実は重い。
注目したいのは、閉店だけでなくブランド変更が混じっている点だ。同じ場所と設備を使いながら、メニューや店名を変えて出直す店が多いことを意味する。アプリ上の評価や価格競争から抜け出すには、店の見え方そのものを作り直すしかない、と考える経営者が増えているのだろう。
アプリ依存を下げるほど店の個性が武器になる
ここに独自の視点を加えたい。アプリは料理を価格順や評価順に並べる。つまり、どの店も同じ土俵で比べられてしまう。同じ麻婆豆腐を出す店が十軒あれば、最後は一番安い店が勝つ。
逆に、地域色の強い料理は比較しにくい。四川や雲南、新疆や東北といった土地の味は、価格だけでは代わりがきかない。個性がはっきりした店ほど、アプリを使わなくても指名で来てもらえる。アプリ離れは、実は料理の専門性を磨く動きと表裏一体である。
日本のガチ中華にも同じ構図が近づいている
日本でも、中国地域料理の店は都心から郊外へ広がり、デリバリーの注文比率が高い店が増えた。人気が出るほど競合も増え、アプリ内の割引競争に巻き込まれやすくなる。
中国で起きている変化は、数年遅れで日本にも波及する可能性がある。違いは、日本では在日中国人の常連客やSNSでの口コミが強い販路になりうる点だ。アプリは入口として使い、リピートは別の経路で受け止める二段構えが、これからの標準になるだろう。
ビジネスへの影響
まず自店のアプリ経由の実質利益率を出す
最初にやるべきは、アプリ経由の注文だけを切り出して、手数料、販促費、割引、梱包費を引いた後の利益を計算することだ。店内の注文と同じ原価率で考えていると、見誤る。
実質の利益が薄い料理は、アプリ上では価格を上げるか、掲載を外す判断も必要になる。アプリ専用の価格を設ける店もすでにある。メニューごとの収益は、page-08-menu-unit-economics.html で整理した考え方が使える。
常連客を自前の窓口へ移す仕組みを作る
アプリで知った客を、二回目からは公式のLINEや電話予約、店頭受け取りに誘導できれば、手数料を払わずに済む。袋にクーポンを入れる、受け取り時に割引にするなど、小さな工夫から始められる。
ただし、規約で他の販路への誘導を禁じるアプリもある。契約内容を確かめたうえで、店内の集客と組み合わせて進めたい。販路全体の設計は page-09-delivery-and-channels.html も参考になる。
看板料理を絞って価格競争から降りる
全メニューをアプリに載せず、他店が真似しにくい看板料理に絞るのも一案だ。地域色の強い一品は、値引きに頼らず選ばれやすい。競合の動きや市場の見通しは page-10-competition-and-outlook.html でも確認してほしい。
