ニュースの概要
中国連鎖経営協会の集計によると、中国の飲食・新式茶飲料ブランド上位50社は、2025年末時点で海外に合計6,801店舗を構えている。2023年以降に初めて海外へ出たブランドも24社ある。海外の中国系飲食店は180を超える国・地域で約70万店にのぼるとの推計も出ている。伸びを支えているのは、四川、湖南、火鍋、麻辣湯といった地域色の濃い料理を前面に出す戦略だ。一方で、出店先の食文化や規制、味覚の違いにどう折り合いをつけるかが課題として挙げられている。中華料理が「ひとまとめの中華」から「地域ごとの専門店」へ移りつつある流れが、数字の上でもはっきり見えてきた。
引用元: 中国発の地域料理・飲食ブランドが海外展開を加速、現地化と本格性を両立(China Daily Asia)
分析・見解
「中華」ではなく「地域名」で勝負する時代になった
今回の数字で目を引くのは、店舗数の多さよりも、進出するブランドの顔ぶれが変わっている点である。かつて海外の中華料理店といえば、広東系の点心や、現地の好みに寄せた甘酢の炒め物が中心だった。いまは四川の麻辣、湖南の辛味、火鍋、麻辣湯のように、土地の名前と味がセットで語れる料理が前に出ている。
日本でも同じ変化は起きている。10年ほど前は「町中華」と「高級中華」の二極だったが、現在は大都市圏で四川火鍋、蘭州ラーメン、麻辣烫、串焼きといった専門店が次々に生まれている。客は「中華を食べる」のではなく「四川の辛さを食べに行く」ために店を選ぶ。検索の入口も、料理名や地域名に細かく分かれてきた。
本格性と現地化は、対立ではなく役割分担である
記事は、本格性と現地化の両立を成功の条件として挙げている。ここで大切なのは、両者を一つの皿の中で妥協させないことだ。うまい企業は、看板商品の核になる味(たとえば花椒のしびれ、発酵唐辛子の香り)は動かさない。そのうえで、辛さの段階、量、サイドメニュー、飲み物を現地向けに調整する。
日本のラーメン店が海外で成功した例が参考になる。スープの骨格は守りつつ、現地では野菜の量を増やしたり、ベジタリアン向けの一杯を用意したりした。核を守り、周辺を変える。この分け方が決まっていると、店舗が増えても味がぶれにくい。
数字が示す「速さ」と、その裏にあるもろさ
2023年以降に初出店したブランドが24社あるという事実は、勢いの強さを示す。同時に、短期間で広げた店は、人材、仕入れ、衛生管理の足腰が弱くなりやすい。特に火鍋や麻辣湯は、タレや香辛料、スープのベースを本国から運ぶ前提で設計されている場合が多い。輸入規制や食品表示のルールが変わると、味そのものを維持できなくなる。
約70万店という推計も、そのまま「競争が激しい」という意味ではない。多くは小規模な家族経営で、チェーンとして管理された店はごく一部だ。だからこそ、仕組みを持つチェーンが現れると、一気に差がつく。この「個人店の海」と「仕組みを持つ少数のチェーン」という二層構造が、今後の市場の形になると見る。
独自の視点:強みは辛さではなく「説明できること」
多くの解説は、辛い料理が受けている点に注目する。しかし本当の差は、味を説明できるかどうかにあると考える。しびれる辛さを「麻(マー)」、唐辛子の辛さを「辣(ラー)」と区別して見せるだけで、初めての客は自分の好みを選べる。メニューの言葉、写真、辛さの目安が整っている店は、再来店の理由を作りやすい。味の強さより、客の不安を減らす設計が定着を左右する。
ビジネスへの影響
日本の中華飲食店は「専門化」と「見せ方」を急ぐべきだ
中国系ブランドの日本進出が増えれば、既存の中華料理店は、価格だけでなく専門性でも比較される。まず、自店の看板料理を一つに絞り、産地や味の特徴を一行で説明できる状態にしたい。辛さの段階表示、アレルゲン表示、日本語と英語のメニューを整えるだけでも、新規客とインバウンド客の取りこぼしは減る。
人材面では、調理の標準化が重要になる。香辛料の量、火入れの時間、スープの濃度を数値で記録しておけば、人が入れ替わっても味が保てる。多店舗化を考えるなら、この記録が最初の資産になる。
仕入れと衛生は、拡大前に固めておく
香辛料や調味料は、輸入品に頼る割合が高い。供給元を一つに絞ると、輸入停止や値上げで一気に原価が崩れる。代替できる国内調達品を試作し、味の差を事前に確認しておくとよい。原価率は季節ごとに見直し、仕入れ価格が上がったときの販売価格の動かし方も決めておく。
出店を検討する場合は、既存の中国系チェーンが集まる立地と、そうでない立地を分けて考える。前者は集客力がある代わりに競合が多く、後者は認知を一から作る必要がある。小さく試して数字を見る、という順序が堅実だ。
自社サイトでは、料理の背景や産地を伝える記事を継続して出すと、検索経由の来店につながる。「何が本格なのか」を言葉で示せる店が、次の競争を有利に進めるだろう。
