ニュースの概要
中国発のスープ料理「麻辣湯」が日本で人気を集め、東京や福岡の店舗前に行列ができている様子が、中国のSNSで紹介された。投稿が注目したのは、客が具材の種類と量を自分で選べる仕組みである。中国の利用者からは、日本で突然ブームになったことへの驚きが寄せられた。同時に、薄味を好む日本人の嗜好や健康志向に合ったのではないか、という見方も出ている。店舗は都市部にとどまらず、地方にも広がりつつあるという。本稿では、この反響から見えてくる人気の構造と、日本の飲食店が受け取るべき示唆を考える。
引用元: 麻辣湯が日本で人気、中国SNSで反響(Record China)
分析・見解
行列の正体は「辛さ」ではなく「選ぶ体験」にある
麻辣湯の人気を、本場の刺激的な味が受け入れられた結果と見るのは早計である。中国のSNSが驚いたのは、むしろ日本の客が具材を自分で選ぶ過程を楽しんでいる点だった。
野菜、きのこ、肉団子、春雨、豆腐製品などをトングで取り、重さで会計し、辛さを段階で決める。この流れは、回転寿司の皿選びや、サラダバーの組み立てに近い。注文が「メニューを読む作業」から「自分で作る遊び」に変わると、客は自分の一杯に愛着を持つ。結果として、同じ店でも毎回違う組み合わせを試したくなる。
薄味・健康志向との相性は、実は後付けの説明でもある
中国の利用者は、日本人が薄味を好み、健康に気を使うから受けたのだと推測した。確かに、スープの中心は野菜と水分であり、揚げ物や油こい料理に比べれば軽く見える。ただし、麻辣湯の本場の味は油も香辛料も強い。日本の店は、辛さの段階を細かく分け、スープを鶏白湯や豆乳系にするなど、味を日本向けに調整している。
つまり「日本人に合った」というより、「日本人に合わせて作り直した」と言うほうが実態に近い。この調整が早かった店ほど、行列を作れている。ここに、海外料理が根づく際の共通点がある。
ラーメンや鍋との競争で、独自の立ち位置を得た
日本の外食市場には、ラーメン、しゃぶしゃぶ、寄せ鍋という強い競合がある。麻辣湯は、そのどれとも少しずつ重なる。汁物で満足感があり、鍋のように具材を選べ、ラーメンのように一人でも気軽に入れる。
さらに、一人用の鍋は「ひとり飯」の需要と合う。誰かと取り分ける必要がなく、好みの具材だけで完結する。近年、若い層や女性客が一人で入りやすい店が増えたことも追い風になった。中華料理の中で、これほど一人客に向く形式は多くない。
地方への拡大は、ブームの持続性を測る試金石になる
都市部の行列は話題性で説明できるが、地方出店は別の問いを突きつける。地方では、客の来店頻度、客単価、食材の仕入れ網が都市部と違う。
過去のタピオカやパンケーキは、都市部で急拡大した後、短期間で店舗数が減った。麻辣湯がそれらと違うのは、食事として成立する点である。昼食や夕食の選択肢に入れば、おやつ的な流行より長く続く可能性がある。一方で、具材の鮮度管理とスープの仕込みという運営の難しさが、地方の小さな店ほど重くのしかかる。
ビジネスへの影響
具材選び方式は、人手不足の店にも向く
具材を客が自分で取る方式は、注文を聞く手間と、調理の工程を減らせる。会計は重さか品数で決まるため、メニューの管理も単純になる。人手の確保が難しい店にとって、これは見逃せない利点である。
ただし、具材の補充と衛生管理には人手が要る。トングの交換、冷蔵ケースの温度管理、食べ残しの廃棄が増えやすい点も、事前に見積もっておくべきである。
既存の中華料理店は、一部のメニューから試せる
麻辣湯の専門店を新たに開くのは、投資額が大きい。既存店なら、まずランチ限定で「選べるスープ春雨」のような形を試せる。スープは数種類に絞り、具材は十数種に抑えれば、仕入れの無駄も少ない。
辛さは五段階程度に分け、辛いものが苦手な客向けに、白湯や豆乳のスープを用意すると、客層が広がる。アレルギー表示や、香辛料の強さの案内も、日本の客には欠かせない。
ブームの終わりを見越して、原価と立地を設計する
行列は強い宣伝になるが、永続しない。具材を少数の食材で共用できるようにし、他のメニューにも転用できる構成にしておくと、客足が落ちた際の損失を抑えられる。
また、中国SNSで話題になった事実は、訪日客の来店にもつながる。多言語の注文案内や、写真付きの説明を整えておけば、国内客以外の需要も取り込める。
